2025年対応版|外国人材制度改正・早わかりガイド

目次
はじめに
日本の在留外国人数は 341 万人(2023 年末)で過去最多※1。
国内市場は少子高齢化が進み、2030 年には 644 万人の労働力が不足 すると予測されています※2。
こうした背景を受け、政府は 2025〜2027 年にかけて外国人材受け入れ制度を大幅にアップデートします。
本記事は、改正の全体像と 「自社が今やるべきこと」 を丁寧に解説しました。
まずは制度全体を俯瞰し、その後に詳細を追っていきましょう。

特定技能・育成就労とは? 基本用語ガイド
制度を読み解くうえで最低限押さえておきたいキーワードは 「特定技能」 と 「育成就労」 の 2 つです。
特定技能(1 号・2 号)とは
特定技能は 2019 年創設の即戦力度外国人ビザ。
1 号は 16 分野で最長 5 年、2 号は更新無制限+家族帯同可という仕組みです。
宿泊・外食・介護など現場の“今すぐ人手が欲しい” 業界で採用しやすいのが特徴です。
- メリット:来日前に技能試験・日本語試験をクリアしているため即戦力。書類審査も比較的シンプル。
- 注意点:生活支援計画書の作成と定期報告 が義務。登録支援機関へ外注しても責任は企業側に残る。
育成就労とは
技能実習制度を置き換える 3 年間の“育成+有給就労”在留資格※3。
目的は 計画的に技能と日本語を育て、特定技能へ橋渡し すること。
終了時に特定技能 1 号試験合格を目指すため、企業は 教育投資 が不可欠です。
ポイント:特定技能=即戦力の短期雇用、育成就労=将来を見据えた中期育成枠。
両輪で設計すると採用計画の自由度が高まります。
2025 年 4 月|訪問介護で外国人就労が解禁
背景
訪問介護は人手不足が深刻な一方、利用者が高齢で医療的ケアも必要なケースが多く、
言語・文化ギャップへの懸念から外国人受け入れは長らく認められていませんでした。
しかし施設介護だけでは需要を賄えず、ついに門戸が開かれました※4。
改正内容
- 対象資格:特定技能(介護)、EPA 介護福祉士候補生、介護技能実習修了者など。
- 受け入れ条件:
- 施設勤務 1 年以上+初任者研修修了
- 業務開始後 1 か月は 同行訪問による OJT
- 多言語での緊急連絡手段を整備
- ハラスメント相談窓口の設置
企業が準備すべきこと
まず、対象者の研修履歴と在留資格 を HR データベースで確認し、
不足があればオンライン講習や外部研修で補完します。
同行訪問ではベテラン職員が最低 5 回同行し、利用者宅での挨拶・安全確認・感染対策を指導。
ICT 活用としてタブレット翻訳アプリや緊急連絡ボタン付スマートウォッチを支給し、
「いざ」という時の安心感を高めましょう。
最後に 相談窓口 を社外 CS センターと連携させ、母国語相談も受け付けると定着率が向上します。
要点
- 技能+日本語+接遇の 3 点セットを満たした人材だけが訪問介護に就く。
- 受け入れ企業は 同行訪問の記録 を残し、行政監査に備える。
- ケアプラン管理者・家族とも多言語チャットで連携するとトラブル防止になる。
2025 年 4 月|特定技能分野拡大&上限撤廃
追加された 4 分野
新分野 | 具体職種例 | 特徴 |
---|---|---|
自動車運送 | トラック・バス・タクシー運転手 | JLPT N3 必須、運転免許の切替要件あり |
鉄道 | 車両整備・駅務・運転士補佐 | 技術試験+厳格な安全教育が必要 |
林業 | 伐木・造林作業 | 地方山間部での求人が中心 |
木材産業 | 製材ライン・乾燥工程 | 機械操作スキルと安全管理が重要 |
人事部門へのインパクト
受け入れ枠撤廃で 計画採用がしやすい 半面、採用競争も激化します。
特に自動車運送は入社後に 日本の二種免許取得 が必要なため、試験サポート体制が採用成功のカギ。
鉄道分野では「時刻・保安規程」を理解できる日本語力を重視し、入社前に E ラーニングで基礎用語を学ばせる企業も増えています。
チェックポイント
- 新分野の 技能試験スケジュール を四半期ごとに共有。
- 締切逆算でビザ申請・入国予定をカスタムタイムライン化。
- 安全教育資料を 日本語+やさしい日本語+母国語 の 3 言語で整備すると事故率を抑えやすい。
2025 年 12 月(予定)|育成就労制度の初回技能試験
タイミング | 求められる試験・要件 | 出典 |
---|---|---|
来日前(受入れ前) | 日本語N5相当(A1)以上の合格または同等講習受講 | Skilled Worker |
1年目終了時まで | 技能検定基礎級 + 日本語N5相当(A1)以上を受験・合格 | まなびJAPAN |
3年目終了時/特定技能1号へ移行時 | 技能検定3級等 または 特定技能1号評価試験に合格 + 日本語N4相当(A2)以上 | 厚生労働省Skilled Worker |
特定技能2号へ移行時(将来) | 特定技能2号評価試験等に合格 + 日本語N3相当(B1)以上 | Skilled Worker |
何が起きる?
- 育成就労対象分野ごとに技能評価試験が初実施(筆記+実技)。
- 合格通知は 2025 年末〜 2026 年初頭。
- 合格者は 2026 年以降、第 1 期育成就労生 として入国可能。
企業の備え
まず 自社の技能実習生リスト を棚卸しし、在籍期限と移行希望をヒアリング。次に、育成就労で採用予定のポジションを明確化し、3 年間の育成計画(OJT+OFF-JT) を作成します。ここでは「N4 合格→業務標準化手順書作成→特定技能試験合格」といった年度目標を設定。さらに、賃金テーブルを見直し “日本人同等以上” を明文化すると制度チェックで有利です。
要点
- 初回試験結果は 2026 年採用計画の試算に直結。
- 育成計画と評価面談サイクル(四半期ごと)を HRIS に登録して管理する。
2026〜2027 年|育成就労制度が本格施行
制度の骨格
- 育成期間 3 年:日本語&技能を段階的に習得。
- 1 年経過+N4 合格で転籍可:ブラック企業抑止とマッチング最適化を狙う。
- 3 年終了後、特定技能 1 号試験合格で長期雇用。
- 最終目標は特定技能 2 号:更新無制限・家族帯同で長期定着を促進。
マネジメント課題と対策
- 転籍リスク:好待遇企業へ人材流出する可能性→ キャリアパス・昇給 を見える化。
- OJT 工数:日本人指導者への負担増→ チューター制度+評価連動手当 を導入。
- 語学壁:技術研修が進まない→ 就業時間内に e ラーニング+対面サポート を週 2 時間組み込む。
ケーススタディ
- A 社(食品製造):育成就労 1 年目に「安全標語コンテスト」を実施→母国語でアイデアを募集し日本語に翻訳、現場事故率 15% 減。
- B 社(建設):社外日本語学校と提携し夜間オンライン授業を提供→ N4 合格率 92%、転籍希望ゼロを達成。
6. まとめ:今すぐ手を打つ 3 ステップ
- 情報共有:経営層・現場リーダーとロードマップを共有し、役割分担を決定。
- 短期対応:2025 年 4 月の改正(訪問介護・特定技能拡大)の社内プロセスを 3 か月以内に整備。
- 中期準備:育成就労施行を見据え、教育・評価・生活支援の 三位一体体制 を着実に作る。
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脚注・出典
※1 出入国在留管理庁「令和 5 年末在留外国人数」
※2 厚生労働省「労働市場予測 2030」
※3 改正入管法・育成就労法(2024 年 6 月公布)
※4 厚生労働省「訪問系介護サービスに従事する外国人の受入れについて」
※5 出入国在留管理庁「育成就労評価試験実施方針(案)」
※6 改正入管法附則(全面施行期日)