留学生を正社員として採用するには?在留資格変更の手続きと注意点を解説

こんな不安、ありませんか?

「留学生の採用が決まったけど、手続きってどうすればいいの?」
「ビザって企業が出すの?本人がやるの?間違えるとまずいって聞くけど…」

留学生を正社員として雇うには、“ビザ(在留資格)の切り替え”が必要です。
卒業後すぐ働いてもらうためには、「留学ビザ」から「就労可能な在留資格」への変更手続きをしなければなりません。

そしてこの手続き、
書類の準備・申請のタイミング・仕事内容の整合性など、意外と見落としがちなポイントがいくつもあるんです。

でもご安心ください。
この記事では、初めて外国籍人材(留学生)を採用する企業の人事担当者向けに、
以下の内容を順を追ってわかりやすく解説します。

📘この記事でわかること

  • 留学生採用に必要な在留資格の基礎知識
  • 留学生を正社員として採用するための4ステップ
  • 在留資格変更時の注意点
  • 成功例と失敗例【他企業の採用事例】

基本的な制度の知識から、実務で必要な対応まで、
全体像を一気に把握できる構成になっています。

また最後には、
「人手不足対策」ではなく「会社を強くする採用戦略」としての留学生採用の可能性にも触れていきます。

留学生を採用する際に必要な在留資格の基礎知識

日本で外国人が滞在・活動するためには、
必ず日本政府が発行する「在留資格」が必要です。

現在、在留資格は全部で29種類あり、
大きく次の3つに分けられます。

  • 就労資格:働くことが目的
  • 非就労資格:学ぶ・文化活動などが目的
  • 居住資格:家族滞在・永住

在留資格一覧表はこちら

留学ビザと就労ビザの違い

外国人留学生が日本で学ぶために持っているのが、
「留学」ビザ(=非就労資格に分類)です。

一方で、企業で正社員としてフルタイム勤務するには、
「就労資格」に分類されるビザへの変更が必要です。

代表的な在留資格は:

  • 技術・人文知識・国際業務
  • 特定技能
  • 技能実習、、、など

つまり、「留学」のままでは正社員として働けません。
卒業後に在留資格を変更しなければならない、という点が最大のポイントです。


✔ 留学ビザとは?

  • 大学や専門学校など、日本での学習活動を目的とした在留資格(非就労資格)
  • 原則、就労不可(※資格外活動許可で週28時間以内のアルバイトはOK)

✔ 就労ビザとは?

日本の企業で働くことが目的の在留資格の大きい分類

審査対象:仕事内容・本人の学歴・スキルなど

誰でも出せるものではなく、条件とのマッチングが大切

💡補足:「ビザ(査証)」と「在留資格」は本来別の制度ですが、
日本ではよく「留学ビザ」などと通称で呼ばれています。
本記事では便宜上そのまま使います。

企業が在留資格を理解すべき理由

「ビザのことは本人がやるでしょ?」
そう思っている企業もありますが、実は企業側の理解・準備が不可欠です。


✔ 理由①:不許可リスクを防げる

在留資格の審査では、
仕事内容

・企業の財務状況

・本人の経歴

などがすべて確認されます。

企業が在留資格の要件に合わない職種で採用してしまうと、
申請が不許可になるケースもあります。


✔ 理由②:スムーズな採用ができる

採用のタイミングと在留資格の手続きがずれると、
「在留資格の変更申請が間に合わず、内定取り消しに…」という事態も起こりえます。

制度を理解しておくことで、
トラブルなくスムーズな入社につなげることができます。


✔ 理由③:候補者に安心感を与えられる

外国人留学生の多くは、
「本当にビザ出るかな…」「就労までの流れが不安」と感じています。

企業側が制度を理解し、しっかりサポートしてくれると、
「ここなら安心して働けそう」と前向きに捉えてもらえます。


在留資格変更の必要性と手続きの流れ

留学生を新卒で正社員として採用するには、
「留学ビザ」→「就労ビザ」への在留資格変更が必要です。


変更しないとどうなる?

  • 卒業後に「留学ビザ」のまま働くのは不法就労となり、企業側にも罰則が及ぶ可能性があります。
  • 本人は不法就労あるいは、在留資格の期限切れによる不法滞在により、強制送還の対象となります。
  • たとえ変更申請をしていても、在留資格の変更が許可されない限り就労はできません

基本の手続きの流れ

  1. 採用内定
  2. 企業と候補者が必要書類を準備
  3. 出入国在留管理局に申請
  4. 許可されれば、就労ビザに切り替え → 入社へ

⏱ 申請から許可までは平均1〜2ヶ月ほどかかります。
卒業直前に焦らないよう、早めの準備がポイントです。

詳しく次章でご説明します。

留学生を正社員として採用するための4ステップ

留学生の採用には、「在留資格の変更」申請手続きが必要です。

この章では、企業側がやるべきことを4つのステップに分けて、
実務ベースでわかりやすく解説します。

在留手続の流れはこちら

ステップ1:採用内定と在留資格の確認

留学生を正社員として採用するには、まず「出会い」が必要です。
採用経路としては、自社採用サイトや求人媒体への掲載のほか、外国人に特化した人材紹介サービスの活用も有効です。

以下では、応募・面接を経て採用が決まった後、企業が行うべき手続きについて説明します。
※外国籍の人材紹介サービスへのお問い合わせはこちら

留学生を正社員として迎えるには、まず現在の在留資格を確認しましょう。
「留学」の在留資格で滞在しているかどうかが、就労可能なビザへの変更前提になります。

その上で、「どのような学校・学部で、何を学んでいるか」を確認します。
採用予定の職務内容と、本人の学歴・専攻との関連性が審査のポイントとなるためです。
(「技術・人文知識・国際業務ビザ」で採用する場合)

「特定技能ビザ」など別の就労ビザの場合はそのビザに合ったポイントを確認します。
特定技能の詳細はこちら‐法務省

さらに、卒業できる見込みがあるかも確認しておきましょう。
卒業見込みのタイミングで内定を出し、就労ビザへの申請準備を進めるのが基本です。


💡ポイント

「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」など、どのビザになるかの判断が重要

卒業見込みのタイミングで内定 → 就労ビザ申請へ

内定時には、職務内容と学歴が合っているか確認(「技術・人文知識・国際業務ビザ」の場合)

ステップ2:企業と候補者が必要書類を準備

在留資格の変更申請は、「企業」と「留学生本人」の両方が関わる手続きです。
申請書そのものは本人が提出しますが、企業が準備する書類の質や内容が審査に大きく影響します。
「「技術・人文知識・国際業務」の認定証明書の詳細はこちら

企業が準備する書類

  1. 会社としての信用・安定性(=共通書類)
  2. その人材を受け入れる妥当性(=従業員採用時の書類(採用個別書類))

📌 実務的には、両方とも企業が用意しますし、あまり「2つに分けて考える必要はない」のですが、
入管の書類チェックリストではこのように分けて記載されているため、
「共通書類(企業概要)」と「採用個別書類」の区別をします。

共通書類:

  • 登記事項証明書
  • 定款の写し​
  • 会社案内(沿革、役員、業務内容、主要取引先、取引実績等が記載されたもの)​
  • 直近年度の決算書(貸借対照表・損益計算書の写し)​
  • 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(税務署の収受印のあるもの)

従業員として採用する場合は追加で:

  • 採用理由書(申請人の経歴と職務内容との関連性、事業の継続性や安定性などの説明)​
  • 雇用契約書の写し​

※企業が上場企業や大企業の場合、提出書類が簡略化されることがあります。​詳細は出入国在留管理庁の公式サイトを参照してください。 法務省

本人が準備する書類

  • 履歴書(学歴・職歴を含む)​
  • 在留資格変更許可申請書​
  • 証明写真(縦4cm×横3cm、無帽・無背景、申請前3ヶ月以内に撮影されたもの)
  • パスポート原本
  • 在留カード原本​
  • 返信用はがき(宛先を明記)
  • 卒業証明書または卒業見込み証明書​
  • 成績証明書​

ステップ3:申請提出と審査期間の確認

必要な書類がそろったら、いよいよ申請です。
在留資格の変更申請は、原則として留学生本人が入管(出入国在留管理局)へ提出します。

📮申請の流れ

  1. 本人が管轄の入管窓口へ必要書類を提出
  2. 書類の受理 → 審査開始
  3. 審査完了後、「結果通知はがき」が届く
  4. 入管で許可を受け、新しい在留カードを受け取る

審査期間は、通常1〜2ヶ月程度が目安です。
ただし、混雑状況や書類の不備によっては、3ヶ月以上かかることもあります。


💡早めの準備が大事!

  • 留学生の卒業時期(3月 or 9月)に入管は非常に混雑します
  • 書類に不備があれば差し戻し → さらに時間がかかります
  • 卒業ギリギリでの申請はリスクが高いため、できるだけ早く申請することが大切です

📌企業側は、本人が「いつ・どこに・どのように申請するか」をきちんと確認し、
必要に応じてスケジュール管理や準備のフォローを行いましょう。


📎補足情報

  • 提出先:本人の住民票所在地を管轄する出入国在留管理局
  • 本人が遠方に住んでいる場合は、郵送申請も可能(ただし、原則は窓口提出)

ステップ4:許可後の入社手続きと注意点

在留資格の変更が許可されると、
留学生本人に「結果通知はがき」が届きます。

このはがきを持って入管へ行き、
新しい在留カード(就労資格付き)を受け取ったその日から、勤務を開始することが可能です。


📌「許可が出た=就労OK」ではありません。
カード交付前に働かせてしまうと、不法就労となるリスクがあります。

✅ 入社前後に必要な手続き一覧

新しい在留カードを受け取ったら、企業側は以下の手続きを進めます。

【必須】法律上必要な手続き(全員対象)

外国人であっても、正社員として雇用する以上、日本人と同様の労務手続きが必要です。

  • 雇用契約書・労働条件通知書の再確認・入社日の決定
    → 就業内容・給与・勤務時間などを明記し、本人と改めて合意、入社日を決定します。
  • 雇用保険・社会保険の加入手続き
    → ハローワーク・年金事務所にて企業側が手続き
  • 税務処理(源泉徴収・マイナンバーの取得確認)
    → 給与支払の対象となるため、必要な税務登録を実施

【推奨】外国籍人材の受け入れ支援(企業の判断で実施)

法的な義務ではありませんが、外国人材の定着と活躍のためには、「受け入れ体制」の整備が重要です。
実際に多くの企業が導入している例として、以下のような取り組みがあります。

  • オリエンテーションの実施
    → 勤怠ルール、福利厚生、給与明細の見方などを丁寧に説明
  • 社内メンター制度・相談窓口の設置
    → 入社初期の不安を軽減し、早期離職を防止
  • 日本語レベルに合わせた資料や業務マニュアルの工夫
    → 難しい表現は避け、図や写真などを活用すると効果的
  • 社内コミュニケーションのサポート
    → 初日や配属時の紹介、歓迎ランチなどで馴染みやすく

💬 ポイント
こうした対応は企業の任意ですが、受け入れ初期のケアが離職率や定着率に直結するケースが多いため、

検討する価値は十分にあります。

在留資格変更時の注意点と企業のサポート体制

ここまでの手続きをしっかり踏めば、基本的には在留資格の変更は問題なく許可されるはずなのですが、
しかし実際には、「申請が不許可になってしまった」というケースも少なくありません。

この章では、不許可となる原因とその対策
そして企業ができる実務的サポートの在り方について解説します。


よくある不許可事例とその対策

以下は、企業の対応次第で防げる「よくある不許可の理由」です。


❌ 1. 職務内容と学歴の不一致

たとえば、「経営学部卒で通訳業務」や「IT系学科卒で事務補助」のように、
仕事内容と学歴・スキルが結びついていないと判断されると、不許可になる可能性があります。

▶ 対策

  • 学歴・専攻と職務内容の関連性を説明できるよう、採用理由書に具体例を記載
  • 実際の業務内容が曖昧でないように、職務内容欄を丁寧に記載すること

❌ 2. 雇用契約の不備や労働条件の不適正

極端に低い給与や不明確な労働条件、書類の不備は、不許可の原因になります。

▶ 対策

  • 雇用契約書は最新・明確なものを提出
  • 賃金は業界水準を下回らないように設定
  • 「試用期間中は無給」などの条件は原則不可

❌ 3. 会社の経営状況に関する懸念

赤字決算が続いていたり、設立直後で信用情報が不十分だったりすると、
「継続的に雇用できるか」という観点から審査に影響が出ることがあります。

▶ 対策

  • 会社案内・実績など、安定性を示す資料を補足
  • 赤字でも、雇用継続の見通しを明示した説明書を添付

企業が提供すべきサポートと体制整備

在留資格の変更申請は本人が行うものですが、企業側のサポート次第で成功率は大きく変わります。


🔹 採用段階からの制度理解

  • 採用前に「この業務で在留資格が通るか」を事前に確認
  • わからない場合は、入管HPや専門家に相談する習慣を社内に

🔹 書類の品質チェック

  • 採用理由書や職務内容書など、企業が作成する文書の精度が審査の鍵
  • 書類のフォーマットだけでなく、内容の一貫性・説得力を重視

🔹 申請後の進捗フォロー

  • 本人が申請を提出した後も、「提出できたか」「受領証はあるか」などを確認
  • 結果通知はがきが届いたら、カード受け取り・入社タイミングをしっかり共有

💡こうした対応は、特別な制度を作る必要はありません。
採用フローの中に在留資格確認・書類チェック・フォローの3ステップを組み込むだけでも十分効果的です。


専門家への相談と連携の重要性

在留資格のルールは制度変更が多く、内容も複雑です。
企業の人事部門だけで完全に対応しきるのは難しい場面も出てきます。


✅ 行政書士や専門家との連携のメリット

  • 最新の制度に即した対応ができる
  • 不許可リスクがある場合に、代替手段や補足資料を提案してもらえる
  • 本人とのコミュニケーションもスムーズに進められる(多言語対応あり)

✅ 相談のタイミングは「採用前」でもOK

  • 「この人材は採用できそうか」
  • 「うちの会社でこのビザは取れるのか」

など、採用を決める前段階で相談することで、不許可リスクを早期に回避できます。


📌 まとめ

在留資格の審査は、「本人任せ」ではうまくいきません。
企業の理解とサポートこそが、採用成功のカギとなります。

【まとめ】優秀な留学生採用の第一歩は、制度理解と準備から

外国人留学生を正社員として採用するには、
「留学ビザ」→「就労ビザ」への在留資格変更手続きが必須です。

この手続きには、書類の正確さ・スケジュール管理・制度の理解が欠かせません。


✅ 採用成功の3つのポイント

1. 採用前に在留資格の要件を確認すること
→ 職務内容と学歴の関連性、企業側の体制をしっかりチェック。

2. 書類準備と申請は、早めのスケジューリングが命
→ 卒業時期は入管が混雑。1〜2ヶ月かかることを見越して進行を。

3. 専門家との連携で、不許可リスクを回避できる
→ 行政書士や人材紹介会社をうまく活用すれば、制度対応もスムーズ。


「人手不足だから」ではなく、
「会社を強くする仲間を迎える」という視点で、
ぜひ留学生採用を前向きに考えてみてください。

次の一歩に迷ったら、私たちもサポートいたします。お気軽にご相談ください。